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出世する人は“戦い方×場所”を選んでいる?人事のプロ曽和氏に聞く、管理職として評価される人の条件

出世する人は“戦い方×場所”を選んでいる?人事のプロ曽和氏に聞く、管理職として評価される人の条件

「同じように働いているのに、なぜか出世する人としない人がいる」――そんな違和感を覚えたことはないでしょうか。現場で高い成果を出しているにもかかわらず昇進できない人がいる一方で、着実にポジションを上げていく人もいる。その差は、単なる能力の違いだけでは説明できません。

出世には「求められる力の変化」や「環境への適応」、そして「戦う場所の選び方」といった構造的なポイントがあります。

本記事では、これまでに数万人規模のキャリアを見てきた人事・採用の専門家である曽和 利光氏にインタビュー。出世する人・しない人の特徴や、40代以降で求められる役割の変化、中途入社で信頼を築くポイントについて紐解きます。

自分の現在地と、これからのキャリアの選択肢を見つめ直すヒントになれば幸いです。

【プロフィール】曽和 利光
株式会社人材研究所代表取締役社長/人事コンサルタント

Contents

なぜ「出世する人」と「出世しない人」がいるのか

出世する人 1

——そもそも「出世」とは何を意味するのでしょうか?

曽和:シンプルに言えば「組織における影響力の大きさ」だと思います。

役職が上がることも一つですが、本質はそこではなく、権限と責任が広がり、関わるステークホルダーが増え、意思決定の影響範囲が大きくなることです。

だからこそ、求められる能力も変わります。個人で成果を出す力だけでなく、組織を動かす力や、他者を通じて成果をあげる力が重要になってくる。ここを理解できているかどうかが「出世する人」と「しない人」を分ける大きな分岐点だと思います。

——現場で圧倒的な成果を出しているのに、なぜか出世しない人もいますよね。この差はどこにあるのでしょうか?

曽和:いくつか理由がありますが、まず大前提として多くの人が見誤っているのは「プレーヤー」「マネジャー」「エグゼクティブ」で求められる能力がまったく異なるという点です。

現職で成果をあげていれば、いずれ評価されて昇進できるはずだ、と考えている人は多いのですが、実はそうではありません。会社は「今の仕事の業績」ではなく「次の役割が担えそうかどうか」で昇進を判断することが多いのです。

つまり、いくら優秀なプレーヤーであっても「この人にマネジメントができるか?」という観点で見た時に期待値が低ければ、昇進は見送られる。結果として「給料は上がるけれどポジションは上がらない」ケースが生まれるわけです。

最近では特にこの傾向が顕著で、マネジメントコンピテンシー(管理職としての行動や能力)などを明確に定義し「次の役割に必要な能力を持っているか、あるいは持てそうか」という基準で昇進を判断する会社が増えています。ただし、その評価プロセスも、最終的には人の判断に委ねられる部分が大きいのが現実です。

出世を分ける「評価」とキャリアスポンサーの存在

出世する人 2

——「やるべきことをやれば評価される」と考えている人も多いと思いますが、実際はどうなのでしょうか?

曽和:評価はそれほど単純なものではありません。例えば、ある上司は結果だけを重視するかもしれないし、別の上司はプロセスや組織への貢献まで見ているかもしれない。また、人柄や周囲への配慮を重視する人もいれば、合理性を重視する人もいる。つまり、同じ行動をしていても、誰が評価するかによって、評価そのものが大きく変わります。

だからこそ重要なのは、自分の価値観でアピールするのではなく「相手が何を評価する人なのか」を理解したうえで、それに合わせて自分の成果を伝えることです。

——評価の話に加えて「誰に引き上げられるか」も重要なのでしょうか?

曽和:とても重要です。キャリアの文脈では「キャリアスポンサー」と呼ばれる存在です。

上に行けば行くほどポジションは限られてきます。仮に部長の枠が1人しかない場合、能力的に3人が候補に挙がっても、最終的に昇進できるのは1人だけです。その時、決め手になるのが「この人を上げたい」と後押しする存在がいるかどうかです。

もちろん、単なるえこひいきではありません。スポンサーは「この人をこのポジションに置けば組織にとってプラスになる」と判断して推すわけです。いわば“投資判断”に近いものです。逆に言えば、どれだけ能力があっても、このスポンサーがいなければ上に行けない現実もあるでしょう。

——いわゆる“社内政治”のようなものも関係してきますか?

曽和:大いに関係します。ただ、ここで言う社内政治は、裏工作や駆け引きのようなものではありません。ステークホルダーの期待を理解し、利害を調整し、合意形成をしていく力のことを「ポリティカルスキル」と呼びますが、これは出世と強い相関があります。

一方で「自分が正しいと思うことをしていれば誰かが見てくれるはずだ」と考えている人は、なかなか出世しません。現実には、組織を動かすうえでポリティカルスキルは不可欠です。これは決して“グレーなもの”ではなく、むしろ重要な能力として捉える必要があります。

出世する人は何が違うのか?若手から40代までの分岐点

出世する人 3

——若手の頃の過ごし方で、その後のキャリアに差はつきますか?

曽和:つきますね。特に大きいのは「修羅場に飛び込むかどうか」です。出世する人を見ていると、共通しているのは、みんなが嫌がるような仕事に自分から手を挙げているんですよ。

例えば、部門間の利害がぶつかるような調整業務。いわゆる「越境型」の仕事ですね。あるいはクレーム対応やトラブルシューティングのような「火消し」の仕事。それから、少し扱いが難しいメンバーの育成です。

このような仕事は、正直しんどいし、すぐに評価につながるわけでもない。でも、役職が上がるほど、こうした経験がそのまま必要な能力になってくるのです。だから、若いうちは「何をやるか」よりも「どれだけ難易度の高い仕事に飛び込むか」が重要だと思います。

——若手のうちに意識しておくべきことはありますか?

曽和:「上司が見ている景色を見る」ことですね。多くの人は自分の仕事だけに目が向きがちですが、組織というのは上から下に向かって目的が連なっています。社長の意図が、役員、部長、課長、メンバーへと順に降りてきます。

その場合、上司が目指していることを理解すれば、自分がどう動けば組織に貢献できるかが見えてくるはずです。これを「当事者意識」と言ったりしますが、言い換えれば「上の立場で物事を見る力」です。

こうした視点を持てる人は、早い段階から「次の役割」を見据えられるようになります。若いうちからマネジャーの視点で物事を捉えたり、組織全体で成果を出す意識を持っていたりする。その結果、評価のタイミングで「この人はすでに次の役割に近い状態にある」と判断されやすくなるのです。

——では、その先の30代後半から40代にかけてはどう変わっていくのでしょうか?

曽和:若手の頃に評価されていたのは「自分で成果を出す力」ですが、30代後半以降は「自分がいなくても回る状態を作れるか」が問われるようになります。昇進・昇格を検討する評価会議でもよく出るのは「再現性があるか」「仕組み化できているか」という観点です。

例えば、とても優秀で個人として成果を出している人がいたとしても「この人がいないと現場が回らないよね」と言われてしまうと、昇進させにくいです。「自分がいなくても成果が出る状態を作る」という発想に切り替えられるかどうかが、大きな分岐点になりますね。

——更に上の層になると、求められるものはどう変わりますか?

曽和:40歳以降、特にマネジャーやそれ以上のポジションになると、完全にゲームのルールが変わります。求められるのは、個人としての瞬発力ではなく「調整力」や「組織を動かす力」です。具体的には、ステークホルダーの利害を調整したり、合意形成をしたり、必要な協力を引き出したりといった力ですね。先ほどお話ししたポリティカルスキルにもつながるものです。

上に行くほど、自分一人でできることは限られてきます。だからこそ「他者を通じて成果を出す力」が重要になる。この変化に対応できるかどうかが、40代以降で伸びる人と止まる人の違いだと思います。

「中途採用」で出世する人の振る舞いと信頼の築き方

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——中途採用の場合、すでにできあがった組織に入る難しさがありますよね。そのような環境でも出世していく人には、どんな特徴がありますか?

曽和:大事なのは、いきなり価値を出そうとしすぎないことだと思っています。中途入社の人にありがちなのが「前職ではこうでした」「このやり方のほうがいいと思います」と、正論で“変えにいく”動きです。もちろん間違ってはいませんが、組織側からすると「この人、まだ何も分かっていないのに口出ししてくるのか」と見えてしまう。

したがって、最初にやるべきは「理解」と「適応」です。具体的には「この会社は何を大事にしているのか」「意思決定は誰がどうやっているのか」「暗黙のルールは何か」といった“見えない前提”を徹底的に観察すること。ここを飛ばして成果を出そうとしても、能力があっても評価されません。

——まずは所属組織の構造を理解することが重要なんですね。

曽和:はい。ここがとても大切で、最初から自分のやり方を通す人よりも、しっかり適応したうえで後から改善提案できる人のほうが信頼されます。信頼がある状態での提案は「改善」になりますが、信頼がない状態での提案は「批判」に見えてしまうんですよね。

中途入社で早く出世する人は、能力が高いのは前提として「この人と一緒に働きたい」と思われる力が圧倒的に高いんです。逆に言えば、どれだけ優秀でも、周囲と摩擦を起こす人は出世から遠ざかりやすいわけです。

——なるほど。では、中途入社者が“出世ルートに乗る”ためには、どんな行動が求められますか?

曽和:まずは、上司が自分に何を期待しているのかを正確に把握することです。ここがズレていると、どれだけ努力しても評価にはつながりません。

次に、小さくても確実に信頼を積み重ねていくこと。最初から大きな成果を狙うのではなく、任されたことをやり切ることで「この人は安心できる」と思ってもらうのが重要です。

そしてもう一つが、周囲との関係構築です。中途メンバーはどうしても“外様”に見られがちなので、意識的にコミュニケーションを取りにいく必要があります。

「出世の限界」を見極める——戦う場所を選ぶという発想

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——どれだけ努力しても出世できない「環境の限界」のようなものは、実際に存在するのでしょうか?

曽和:ありますね。例えば、ポストが詰まっていて上が空かない組織や、年功序列が強く評価と昇進が連動していない組織。または、マネジメントポスト自体が少なく、物理的に上がれる席が限られているケースもあります。こうした環境では、どれだけ能力が高くても出世のスピードにはどうしても限界が出てしまいます。

——「環境による限界」があると感じた場合、どのようにキャリアを考えていくべきでしょうか?

曽和:大切なのは「自分の努力不足かもしれない」と捉えることと同時に、「戦う場所が適切か」を見極めることです。一定以上やり切ったうえで伸び悩んでいるのであれば、環境を見直すことは決して逃げではありません。むしろ、同じ能力でも評価される場所とされない場所がある以上、自分の強みが生きる環境を選ぶことは合理的な判断です。

組織によって評価される力は異なります。調整力が重視される環境もあれば、突破力が評価される環境もある。自分の特性と組織の評価軸が噛み合っていないと、どうしても評価は上がりにくくなります。

そして、その“ズレ”に気づくために有効なのが、外の市場からの評価を知ることです。普段の仕事のなかでは自分の価値は相対化しづらいものですが、他社や転職エージェントからどう見られるかを知ることで、自分がどのような環境で評価されやすい人材なのかが見えてきます。

その結果「今の会社でもう少し頑張ろう」と思えるのであればそれも一つの選択ですし、逆に「このままだと評価されにくい」と気づけたのであれば、それもまた大きな収穫です。

出世というのは、自分の努力だけでなく、環境との相性にも大きく左右されます。だからこそ、自分を磨くことと同時に、その力が正しく評価される場所を選ぶ視点を持つことが、キャリアを前に進めるうえで欠かせないのだと思います。

——最後に、「もっと上に行けるはずだ」と自らの可能性を信じている管理職の読者の方へ、アドバイスをお願いします。

まずは、「自分が主役」「自分がいなくては回らない」といった状態を卒業し、「自分の上司を出世させる」といった気持ちで仕事に取り組むと良いと思います。上司を出世させることに全力を尽くすと、その上司がキャリアスポンサーになってくれる可能性があるからです。

また、人に求めるだけでなく、「自分自身がキャリアスポンサーになってみる」というのも“出世できる人”になるための大切な考え方と言えるかもしれません。

そうはいっても、人事制度や人の評価は完璧なものではありませんし、会社によっては自分の努力だけではどうにもならないこともあるので、客観的に現状を分析してみましょう。

(取材・執筆:金子 茉由)

 

出世する人 書影

【書籍】『「どこに行っても通用する人」になるために今できること』

 

この会社にこのままいて大丈夫? 上司や先輩を見て「こうなりたくない」って思う。市場価値が高い人材になるには? 1000社・2万人を見てきた人事コンサルタントが教える、本当に欲しいキャリアをつかみとった人が20代・30代でやってきたこと。
(日本実業出版社書籍紹介より引用)

 

日本実業出版社刊
著者:曽和 利光
発行年月:2025年6月
定価:1,760円(税込)

 

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曽和 利光さんのプロフィール画像

曽和 利光

株式会社人材研究所 代表取締役社長/人事コンサルタント/日本ビジネス心理学会理事/一般社団法人日本採用力検定協会理事/情報経営イノベーション専門職大学客員教授

1971年、愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科卒業。大学在学中は関西大手進学塾にて数学科統括講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用・人事の責任者を務める。

その後、2011年に人事コンサルティング会社、株式会社人材研究所を設立。日系大手企業、外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小企業、スタートアップ、官公庁、大学、病院など、多くの組織に人事や採用のコンサルティング、研修、講演を行うと共に、執筆活動を行う。

著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』(WAVE出版)、『シン報連相』(クロスメディア・パブリッシング)『「どこに行っても通用する人」になるために今できること』(日本実業出版社)など多数。