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脱退一時金とは、勤続年数が企業年金の支給要件に満たない人が確定給付企業年金(DB)を脱退する際、年金の代わりに支給される一時金
脱退一時金は転職先への移換が可能なため、基本的には受け取っておいて損はない
転職を検討している人は、現職の企業の退職金制度をよく確認しておくとよい
キャリアの分岐点に立たされやすい30代は、転職を検討する人が多くいます。しかし、定年前に退職するとなると、退職金やこれまで積み立てられてきた企業年金はどうなるのか気になる人も多いでしょう。
そこで本記事では、30代の転職における退職金や企業年金の脱退一時金、資金の移換について解説します。
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厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、退職金制度がある企業は74.9%です。そのため、4社に1社は退職金制度がないということになり、そもそも退職金を必ず受け取れるとは限らないといえます。
また、退職金制度がある場合は、主に「退職一時金」と「企業年金」の2種類に分けられます。
退職一時金とは、退職金を一括で支給される制度です。企業が独自に原資を積み立てて支給するケースのほかに、共済に掛け金を納付するケースもあり、後者を退職金共済といいます。
退職金共済は国が助成する共済(中小企業退職金共済や小規模企業共済など)が運用しているため、会社が倒産しても退職金を受け取れる点がメリットです。
退職金を年金として、長期にわたり一定額ずつ支給される制度です。
企業年金には、確定給付型(DB)と確定拠出型(DC)の2種類があります。
将来受け取れる年金の給付額をあらかじめ決め、企業がそれに必要な掛け金を支払う制度です。
拠出も運用も企業が担い、運用の結果給付金額に満たない場合は、企業が追加で支払う必要があります。
企業が掛け金を支払い、従業員がそれを元手に金融商品を選び、自ら運用する制度です。将来受け取れる年金の給付額は、運用成果によって変動します。
なお、従業員が運用だけでなく、掛け金の支払いも自ら行う制度を、個人型確定拠出年金(iDeCo)といいます。
ここからは、退職金を一時金として受け取る場合と年金として受け取る場合のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。まずは、一時金のメリット・デメリットからです。
退職金を一時金として受け取る場合は、税法上の優遇措置を受けることができ、税負担が軽減されます。
勤続年数が長いほど控除額が増えるため、長く勤めた企業を辞める場合はメリットが大きいでしょう。
退職金を一度に受け取ると、年金として受け取る場合と比べて、総支給額が少なくなる傾向があります。
年金の場合、退職後も支給されていない分が運用され、その分が上乗せされる可能性があるためです。
次に、退職金を年金として受け取るメリット・デメリットを解説します。
一時金のデメリットでも解説したように、年金として受け取る場合は、まだ受け取っていない分の退職金を原資とした運用がなされます。
この運用益により、一時金より受取総額が多くなる可能性がある点が、退職金を年金として受け取る魅力です。
退職金を年金として受け取る場合は、退職所得に対する優遇措置を受けることができません。
そのため、運用益により支給額が増額されても、代わりに税金の負担が増す恐れがあります。
企業年金の脱退一時金とは、勤続年数の不足により企業年金を受け取れない人が確定給付企業年金(DB)を脱退する際に、年金の代わりに支給される一時金のことです。
たとえば、確定給付企業年金の企業から確定拠出年金(DC)の企業に転職する場合は、この脱退一時金を転職先の確定拠出年金に移換することができます。転職先に企業年金制度がない場合は、iDeCo(個人型確定拠出年金)や通算企業年金への移換が可能です。
簡単にいうと、企業年金の脱退一時金には、転職先へ引き継ぐ方法があるということです。そのため、転職の際は受け取っておいて損はないといえるでしょう。
なお、確定拠出年金には脱退一時金というものはなく、あくまで確定給付企業年金だけの制度です。詳しくは後述しますが、確定拠出年金の資金を転職先に移換すること自体は可能です。
確定給付企業年金以外にも、転職先への移換が可能な退職金・年金にはいくつか種類があります。
中小企業のための退職金共済制度です。「独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部(中退共)」が運営しています。
同じく中小企業退職金共済制度に加入している企業に転職した場合は、転職先に退職金の通算を申し出ることができます。
建設業、清酒製造業、林業を対象とした退職金共済制度です。
中小企業退職金共済制度と同様に、同じ加入企業に転職した場合は、転職先に退職金の通算を申し出ることができます。
企業確定拠出年金には、企業型確定給付年金のような脱退一時金はありませんが、資金を転職先の企業確定拠出年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)、通算企業年金に移換することは可能です。
企業確定拠出年金から企業型確定給付年金への移換もできますが、対応している企業はあまり多くありません。
退職金の金額を決定する要因としては、主に次のようなものがあるでしょう。
・企業規模
・業界
・勤続年数
・学歴
・企業への貢献度
それぞれの要因について、以下で詳しく解説します。
一般的には、規模が大きい企業の方が、退職金の金額が高い傾向があります。これは、退職金制度が企業の資金力や財務力から影響を受けるためです。
大企業ほどこれらの力に余裕があるため、中小企業と比べて手厚い退職金を支給できる場合が多いでしょう。
退職金の給付水準は、在籍している業界によっても異なります。
あくまで傾向ではありますが、医療業などは退職金が低く、金融業などは退職金が高くなりやすいといわれています。
通常は、勤続年数が増えるほど退職金の支給額も大きくなるケースが大半です。
また、企業によっては、退職金の支給要件に勤続年数を含めている場合もあります。その場合、勤続年数が短い人は退職金を受け取れない可能性もあるでしょう。
退職金の支給額は、高卒、大卒などの学歴によっても変動する傾向があります。
一般的には、高卒よりも大卒、大卒よりも大学院卒の方が退職金が高くなりやすいでしょう。
なかには、従業員の貢献度に応じて、退職金を加算する企業もあります。たとえば「重要なポジションに就いた」「高い成果を上げた」など、在籍中に高い評価を得た人ほど、退職金が高くなります。
こうした仕組みは、インセンティブ制度を導入している企業で用いられるケースが多いでしょう。
ここからは、勤続年数と学歴によって金額が決まると仮定した場合の、退職金の目安を紹介します。
中央労働委員会の「令和3年賃金事情等総合調査」のモデル退職金によると、高卒者の退職金における勤続年数の違いによる退職金の目安は以下のとおりです。
事務・技術(総合職) | 生産 | |||
調査産業計 | 製造業 | 調査産業計 | 製造業 | |
33歳(勤続年数15年) | 403万5,000円 | 451万9,000円 | 422万4,000円 | 448万5,000円 |
38歳(勤続年数20年) | 664万7,000円 | 733万6,000円 | 690万9,000円 | 712万7,000円 |
大卒者のモデル退職金によると、勤続年数の違いによる退職金の目安は以下のとおりです。
事務・技術(総合職) | ||
調査産業計 | 製造業 | |
32歳(勤続年数10年) | 310万2,000円 | 355万4,000円 |
37歳(勤続年数15年) | 577万9,000円 | 647万3,000円 |
同じ「事務・技術(総合職)」「勤続年数15年」という条件で比べてみると、大卒者の方が高卒者よりも退職金の平均額が高いことが分かります。
退職金の制度設計は、企業の裁量に任せられています。従業員が自己都合退職した場合、企業は退職金を減額あるいは支給しないとすることも可能です。
そのため、転職する際には、企業の就業規則をよく確認する必要があります。ただし、退職金を気にして転職を踏みとどまることは、キャリアの可能性を狭めることにつながります。
退職時に受け取れる金額だけでなく、転職した場合の生涯賃金も含めて検討するようにしましょう。
退職金を受け取る流れや、必要な手続きは企業ごとに異なります。支給時期についても企業ごとに差がありますが、一般的には退職後1~2か月後に退職金が支給されることが多いでしょう。
退職者に求められる手続きとしては、企業に指定された申告書を提出する程度であるため、それほど手間はかかりません。
脱退一時金とは、勤続年数が企業年金の支給要件に満たない人が確定給付企業年金(DB)を脱退する際、年金の代わりに支給される一時金です。脱退一時金は転職先への移換が可能なため、基本的には受け取っておいて損はありません。そのほか、退職時に支給される退職金や年金には、さまざまな種類があります。転職を検討している人は、現職の企業の退職金制度をよく確認しておくとよいでしょう。
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マイナビスカウティング編集部
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