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中間管理職とは、現場の社員と経営層の間に立ち、両者の橋渡しを担う重要なポジションです。現場の状況を把握しつつ、上司の方針を的確に伝え、業務が円滑に進むよう調整する役割があります。
本記事では、中間管理職に求められる能力や平均年収、また多くの中間管理職が抱えがちな悩みや次のキャリアについて詳しく解説します。
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Contents

中間管理職とは、部や課といった部門の責任者として部下を指導・管理し、上司と現場の橋渡しを担う企業の目標達成に不可欠で重要なポジションです。
中間管理職には明確な定義がなく、労働基準法上の「管理監督者」に該当しない場合もあります。労働基準法第41条および厚生労働省では、管理監督者を「経営者と一体的な立場」と定め、以下の基準を示しています。
| 1. 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
2. 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること 3. 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること 4. 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること |
中間管理職であっても、労働基準法の管理監督者に該当しない場合は、一般の労働者と同様に残業代や休日の保障が適用されます。
【出典】厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
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どの役職からが中間管理職とされるかを理解するには、管理職全体の階層を把握することが重要です。以下の表に、管理職の種類ごとの主な役割と代表的な役職をまとめました。
管理職の種類 |
主な役割 |
主な役職 |
| トップマネジメント | 事業戦略と経営方針を策定し、組織運営の最終意思決定を行う | 会長、代表取締役社長、副社長、常務、専務など |
| ミドルマネジメント (中間管理職) |
経営方針を現場に落とし込み、部門統括や部下育成、進捗管理を行う | 部長、次長、課長など |
| ロワーマネジメント | 現場スタッフの指導と日常業務の管理を担当する | 係長、主任、チーフ、プロジェクトリーダーなど |
トップマネジメントは経営戦略に重きを置き、ロワーマネジメントは現場業務に特化しているのが特徴です。一方、ミドルマネジメントは両者をつなぐ橋渡し役を担っています。
なお、係長はロワーマネジメントに分類されることが多いものの、現場と上司の間にいる立場として、「中間管理職」と呼ばれることがあります。
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中間管理職は、部署内の意思決定から部下の育成、他部署との連携まで、組織運営において幅広い役割を担っています。ここでは、中間管理職が果たすべき主な役割について具体的に紹介します。
中間管理職には、部署内における意思決定が求められます。そのために、今期だけでなく中長期的な目標達成に向けて、さまざまなデータや状況を加味し、あらゆる選択肢の中から最善策を見極める必要があります。
こうした意思決定のもとで日々の業務が進められるため、計画が適切に実行されているか、期待する成果が得られているかを継続的に管理することも重要です。進捗状況の監視、課題の早期発見、必要に応じた軌道修正によって、部署全体の目標達成を目指します。
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中間管理職は、経営層の方針や指示を現場に的確に伝えると同時に、現場の状況や意見を上司にフィードバックする橋渡し的な役割を担っています。
上司と現場それぞれの視点や状況を理解し、双方向のコミュニケーションを円滑にすることで、業務がスムーズに進み、組織全体の目標達成につながります。
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企業によって異なりますが、社内には担当業務ごとに「営業部」「製造部」「管理部」など独立した部署が設けられているのが一般的です。そのため、各部署間の調整と連携が欠かせず、適切な連携が行われないと企業運営が滞る可能性があります。
中間管理職は、プロジェクトの進行状況を社内に共有しながら、課題が発生した際には関係部署と協力して解決策を見いだすことが求められます。横断的な視点を持って、組織全体の効率的な運営につなげるのです。
部下一人ひとりの能力や適性を見極めてそれぞれに適した指導や教育を行うとともに、業務実績も含めて成果を的確に評価することが中間管理職の重要な役割です。また、部下の課題や悩みに寄り添い、必要な支援を提供することも重要です。
個別のフィードバックを含めた総合的なマネジメントによってモチベーションと能力を高め、チーム全体を目標達成に導きます。
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部署内で抱える課題を把握し、解決策を講じて働きやすい環境をつくることは、長期的な成果を生むうえで欠かせません。中間管理職は、現場の状況や声を反映させながら職場環境を整え、業務の円滑化や社員のモチベーション維持に努めます。
また、業務上のトラブルや人材面でのリスクを素早く察知し、適切な対処を行うことで、組織の安定した運営を支えます。
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中間管理職は、組織運営やチームマネジメントに必要となるさまざまな能力を求められます。これらの能力は、日々の業務を円滑に進めるだけでなく、部下の育成や組織の目標達成という観点でも必要です。以下では、特に重要な能力について詳しく解説していきます。
中間管理職は部署をまとめる長であるため、リーダーシップは欠かせない能力の一つです。リーダーシップとは、集団をまとめて目標達成に向けて統率・指導する力のことを指します。
部署内においては、部下の意見に耳を傾けながらも、明確な方向性を示してチームをまとめることが重要です。加えて、困難な状況でも冷静に判断を下し、率先して行動する姿勢や、経験の浅い部下には明確な指示を出し、経験豊富な部下には自律性を尊重するなど、リーダーシップのスタイルを柔軟に切り替えることが求められます。
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業務を円滑に進めるには、進捗管理はもちろん、部下の育成やモチベーション管理など適切なマネジメントを行うことが必要です。中間管理職のマネジメント能力は、チームのパフォーマンスに直結します。
適切な指導や評価、コミュニケーションを通じて部下を支援し、人員や時間、予算などの資源を効果的に配分することで、チーム全体の成果を高めることが求められます。
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リーダーシップを発揮してマネジメントを行うには、信頼関係を築くコミュニケーション力も重要です。部下はもちろん、上司や社外の関係者とも適切に意思疎通を図ることで、業務が滞りなく進みます。
効果的なコミュニケーションは、スムーズな情報共有や問題解決を促し、チームメンバーの連携強化や組織全体のパフォーマンス向上につながります。
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大小にかかわらず、業務を遂行するうえではさまざまな問題に直面します。その際に求められるのは、速やかに原因を特定し、効果的な解決策を提示する問題解決能力です。
中間管理職が問題解決能力を発揮し、問題の早期解決と再発防止に努めることで、業務の停滞を防ぐことができます。
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リスク管理能力とは、業務や組織運営に潜むリスクを予測・把握し、適切に対応する能力を指します。中間管理職は、問題が発生する前に、また問題が拡大する前に潜在的なリスクを発見し、対策を講じなければなりません。
問題が顕在化する前にその予兆に気づくことで、トラブルの未然防止や迅速な対応が可能となり、チームや組織の安定性が向上します。
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ここでは、厚生労働省の調査をもとに中間管理職の年齢・年収・男女の割合をそれぞれ比較しながら紹介します。役職ごとの違いや傾向を理解することで、組織の人事構造やキャリア形成の特徴を把握しやすくなるでしょう。
中間管理職の平均年齢は次のとおりです。
企業規模計(10人以上)
役職 |
平均年齢(歳) |
| 部長級 | 53 |
| 課長級 | 49.3 |
| 係長級 | 45.6 |
役職が上がるごとに年齢も高くなっており、約4年前後のスパンで昇進していることが分かります。若手の起用は多くなく、管理職へ起用されるにはある程度の経験や実績が求められているのが現状です。
【出典】厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査の概況(8)役職別にみた賃金」
中間管理職の平均給料(月額)と平均年収は次のとおりです。
企業規模計(10人以上)
役職 |
平均給与(千円) |
平均年収(千円) |
| 部長級 | 636.7 | 9,786.8 |
| 課長級 | 525.5 | 8,243.6 |
| 係長級 | 430.6 | 6,578.6 |
役職が上がるごとに収入が増えており、責任や業務範囲の違いが給与に反映されていることが分かります。段階的な昇進によってキャリアアップが促されています。
【出典】厚生労働省「役職、学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額、表番号1」
※令和6年賃金構造基本統計調査より企業規模計のデータを参照。平均年収は「きまって支給する現金給与額」に12を乗じ、「年間賞与その他特別給与額」を加算して算出。
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中間管理職における男女の割合は次のとおりです。
企業規模計(10人以上)
役職 |
男性割合(%) |
女性割合(%) |
| 部長級 | 92.1 | 7.9 |
| 課長級 | 88 | 12 |
| 係長級 | 80.5 | 19.5 |
係長やそれに近い役職では女性の割合がほかの役職よりやや高いものの、男性が依然として多数を占めています。役職が上がるにつれて女性の割合は低くなる傾向があります。
【出典】厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査結果のポイント(概要)」
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中間管理職は、日々さまざまな課題に直面します。ここでは、中間管理職のよくある悩みを紹介するとともに、その対処法についても解説します。
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中間管理職は上司と部下をつなぐ橋渡し役を担う一方、それによって板挟みになりやすい傾向があります。特に上司の意向と現場の状況に乖離がある場合は、解決策を見いだすのが難しく、悩みの種となります。
そのような時は、上司からの要求と部下の要望を分けて考えて、事実ベースで重要度を見極めて対応の方向性を明確にすることが大切です。
また、コミュニケーションの透明化によってそれぞれの主張を見えやすくしたり、交渉スキルを磨いて相手の妥協点を見いだしたりすることも有効だと言えるでしょう。
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中間管理職になると、管理業務やマネジメント業務に加え、部署内の通常業務も兼任することが多く、業務量の負担が大きくなりがちです。企業によっては残業が増えたり、勤務時間外に業務対応を行わざるを得ないこともあります。
こうした多様で増大する業務を効率的にこなすためには、優先順位の明確化や適切な業務分担を行い、時には部下や他部署の協力を求めることが必要です。
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中間管理職は、部・課・係などそれぞれの範囲で設定された中長期的な目標の達成に向けて尽力しなければなりません。責任者として成果を出さなければならないというプレッシャーを背負いながら日々の業務にあたることになります。
思うような結果が出ない場合でも、状況を立て直すためにあらゆる方法を模索しなければならず、その重圧は大きな負担となることもあるでしょう。
しかし、キャリアの幅を広げるうえで責任は避けられないものです。また、適度なプレッシャーは集中力を高め、成長のきっかけになることもあります。
重圧に押しつぶされそうな時は、「短期の目標を設定して成功を積み重ねる」「一人で抱え込まず、部下や周囲と協力して検討する」など、精神的な負担を軽減する工夫が必要です。
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中間管理職は、部下の育成と自身の業務遂行という二つの役割を同時に担うため、時間やエネルギーの配分に悩むことがあります。
例えば、自分で作業を進めたほうが早い場合もありますが、それでは部下の成長機会が減ってしまいます。逆に、部下に任せて経験を積ませようとすると、短期的には効率が落ち、自分の業務進捗にも影響が出ることがあります。
この難しさに対処するには、まず業務の優先順位を明確にし、タスクを細分化して進めるのが効果的です。
また、部下を育成する際は、いきなり大きな仕事を任せるのではなく、日常業務の中に育成の機会を組み込みながら段階的に権限を委譲することで、双方の役割をバランスよく果たせる体制を築けるでしょう。
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中間管理職として培ったマネジメント経験は、今後のキャリアにも大いに役立ちます。その経験をどう生かしてキャリアの選択肢を考えられるのかを紹介します。
現在の会社で実績を積み重ねて、更なる上位職への昇進を目指すのは堅実で王道なキャリアパスです。昇進に向けては、日々の業務で着実に成果を出し、組織全体を見渡す広い視野とマネジメント力を磨くことが重要です。
ただし、職場によっては実績を積んでもポジションが空かず、昇進までに期間を要したり、経営体制の問題で経営層への昇進が難しかったりするケースもあります。
昇進が遅れてキャリアが停滞すると、給料が上がらないうえに成長の機会を失うことにもなるため、現在の会社の評価体制で、どこまでの昇進が可能なのかをしっかりと見極めましょう。
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中間管理職として培ったマネジメントスキルは、転職先でも即戦力として大きな強みになります。戦略の立案や部署の統括、役員のサポートなど、中間管理職の経験を求める職場は多いです。
また、転職先で異なる価値観に触れることで、更なる成長と視野の拡大を見込めます。「新しい環境で自分の力を試したい」「将来を見据えてキャリアアップしたい」と考えている方にとって、転職は有効な選択肢です。
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中間管理職は、経営層と現場の間に立って組織の運営を支えながら、目標達成に向けてチームをまとめる重要な役割を担っています。マネジメント能力やコミュニケーション力など多様なスキルが求められることに加え、責任の重さに悩む方も少なくありません。
しかし、その分やりがいも大きく、将来のスキルアップやキャリア形成にもつながる経験を得ることができます。悩みや課題を克服し、チームや組織を力強くけん引できる中間管理職を目指しましょう。
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監修:谷所 健一郎
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)/有限会社キャリアドメイン 代表取締役
1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」、「転職者のための面接回答例」、「転職者のための自己分析」(いずれもマイナビ出版)ほか多数。